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私はクロネコヤマトを支持します

2004年10月16日

宇佐美 保

 

 郵政民営化に就いて、首相官邸ホームページを覗いて、

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/yuseimineika/dai6/6gijiyousi.html

「郵政民営化に関する有識者会議第6回会合(平成16年7月5日(月)) 議事要旨」(日本郵政公社の経理部門を担当の高橋理事の発言)を読み、郵政事業に関して次の点を認識し愕然としました。

 

郵政事業では依然として、5,518 億円の債務超過
平成14年度は200 億円を超える赤字
15年度損益は黒字に転換(全体で263 億円の当期利益)
全体的に郵便物数につきましては下がり気味……一方で更に競争力強化のための投資が必要になって……200 億円の当期利益の確保を目指してまいりたいと思っておるところでございます。
今までかかっておりませんでした固定資産の税金……税額的には2分の1でございますけれども、それぞれの市町村等にお支払いをするということになっております。
郵便局で印紙を販売させていただいておりますけれども、……郵便局の窓口でお売りをしている手数料ということになりますが、これは691 億円に上っている


 

 こんな低迷した経営状態で、郵政公社が、何故、「ゆうパック」がヤマト運輸の「宅急便」よりも安価に価格設定出来るのか?
とても不思議になりました!

 

 だってそうではありませんか?

平成15年度に「全体で263 億円の当期利益」と言っても、濡れ手で粟の「郵便局で印紙を販売」によって、「手数料……691 億円」というのですから!

 

 

この印紙販売の手数料がなければ、「263 億円―691 億円=428億円」の大赤字となります。

 

 その上、郵便局では、「年賀郵便」と言うドル箱があります。

日本郵便公社のホームページには、平成16年度発行予定の年賀葉書枚数が、44億4,780万枚、年賀用切手は、50円分が5500万枚、80円分が1100万枚です。

これら、年賀郵便(葉書と切手)関係で、2260億円の収入が見込めるのです。

 

この年賀郵便は正月前後の数日に、アルバイトなどの安い人件費で、多量の郵便物が捌けるのです。

それも配達は、纏めて何通も同一家庭、同一会社に配達出来るのです。

 

 ですから、

郵政公社は、年賀郵便からの収入2260億円の多くの部分は、利益として計上されましょう。

(その半分で1130億の利益、3割で678億円、1割でも、226億円の黒字となります。)

大変なドル箱です。

 

 この年賀郵便関係の利益(たとえ、2260億円の1割の利益でも226億円)は、15年度の黒字分「263 億円」に充分(以上)に匹敵します。

 

 従って、

郵政公社に「印紙」と「年賀状関係業務が独占で許されていなければ毎年「1兆円位」は赤字を出し続けるのではないでしょうか?

 

 (以前から、ヤマト運輸は、この年賀状の配達を、希望していますが、未だに認可されていません。)

 

 こんな酷い赤字体質の郵政公社ですから、世界的に高すぎると言われている、郵便料金を下げることは出来ないのです。

 

 ところが、ヤマト運輸の「クロネコメール便」は、郵政公社の郵便物よりも安価に配達されています。

 

ここで両者の価格を比較してみます。

郵便物(クロネコメール便)の重量(g)と価格(円)
25g以内 50g以内 100g以内 150g以内 250g以内 300g以内 500g以内 600g以内 1000g以内
郵政公社 定形郵便物 80円 90円
郵政公社 定形外郵便物 120円 140円 200円 240円 390円 580円
ヤマト運輸 クロネコメール便 80円 110円 160円 210円 310円


 この表を見れば一目瞭然、「クロネコメール便」の方が安価なのです。

そこで、郵便物を郵政公社ではなくて、「クロネコメール便」を利用したいと思っても、「クロネコメール便」は、通常郵便「信書」での利用が不可能なのです。

 

 何故なら、「『信書』配達の国家独占を定めた郵便法五条」によって、「クロネコメール便」は、「信書」への進出を阻止されているのです。

郵便公社は保護されているのです。

 

 従って、今から8年(小泉氏が橋本内閣の厚相だった時)も前の雑誌「アエラ」(1996年12月16日)には、次のような記事が載っているのです。

 

……業界サイドからは、宅配便業界トップのシェア三四・五%(郵便小包は二二・一%)を占めるヤマト運輸が対郵政戦争を仕掛けてきた。

 長くその戦闘正面を指揮してきたのが、二十年前の七六年、「クロネコヤマトの宅急便」を考案し、郵便小包と旧国鉄小荷物の独占市場に殴り込みをかけた二世社長、小倉昌男前会長(七一)である。

 「郵便事業は民営化されるのが一番いいが、時間がかかりそうだ。ただ、『信書』配達の国家独占を定めた郵便法五条を、そこだけ削除してくれれば民間と対等の競争になる。そうなれば規制緩和はそこからダダダダッと進む。小泉さんが、そんな議員立法を出してくれればありがたいのだが」……

 

 この様に、「印紙」と「年賀郵便」のドル箱を独り占めして「信書」も独占し、税金面でも、「固定資産の税金……税額的には2分の1」と言った状態で優遇されていながら5,518 億円の債務超過が存在する郵政公社の「ゆうパック(郵便小包)」が、何故、「ヤマト宅急便」より安価に配達出来るのでしょうか!?

 

 因みに、ヤマト運輸は、その「損益計算書の要旨」(下記に掲載)を見ますと、黒字で、税金(各々郵政公社の黒字相当分近く)もキチンと払っています。

損益計算書の要旨(単位:百万円)
(自2001年 4月 1日 至2002年 3月31日)
科目 金額
営業収益 819,677
営業費用 780,734
営業利益 38,942
営業外収益 3,662
営業外費用 2,379
経常利益 40,225
特別利益 448
特別損失 4,739
税引前当期利益 35,934
法人税、住民税及び事業税 21,195
法人税等調整額 △4,574
当期利益 19,313
前期繰越利益 6,867
退職手当基金取崩額 332
中間配当額 3,229
当期未処分利益 23,285


 赤字体質の郵政公社が、何故、立派に新たな「宅配便」と言う業務形態を独自に確立し立派な業績を上げている「ヤマト運輸」の屋台骨を揺るがしてしまう暴挙にでるのでしょうか?

 

 その上、9月18日の朝日新聞には次の記事も出ていました。

 

 日本郵政公社は10月1日から郵便小包「ゆうパック」の料金を全面改定する方針を固め、17日、総務省に届け出た。顧客が郵便局やコンビニなどの小包取扱店に持ち込むと、荷物1個に対し100円割り引く新サービスが柱。ヤマト運輸が同様のサービスで先行しているが、公社の料金は新たに始めるゴルフバッグやスキー用具の配送を含めて同社より格安の設定になっている。ローソンの郵便小包の取り扱い開始で対立を深めた両社が、サービス内容でもぶつかることになり、民業圧迫批判が再燃しそうだ。

 郵政公社は新ゆうパックの全容を29日に発表する。新料金体系は小包の重さに応じて料金を定めた従来の「重量制」を廃止し、小包の縦、横、高さの合計の長さで料金を区分するヤマトと同様の「サイズ制」を導入。料金表は60センチから170センチまで200円刻みで7段階に分かれ、それぞれ距離に応じて56通りの料金を設定している。……

 例えば、東京都内で60センチサイズの小包の場合は600円。郵便局などに持ち込むと500円になり、ヤマトの640円を下回る。標準的なゴルフバッグやスキー用具の最低料金も1350円で20円安い。さらに郵政公社は、ゆうパックを過去に送ったあて先に再び送る場合、前回の控えがあれば50円割り引く新サービスも導入する。

 

 科学技術の分野に於いては、「宅急便」「スキー、ゴルフ便」などは、「特許」に相当するアイデアでしょう!

(それを、さっさと巨人の郵政公社が「ねこばば」する態度は頂けません!!!)

私は、ゴルフ場へ行ったことはありませんし、スキー場に行ったとしても、そこで貸しスキーを借りるので、「スキー、ゴルフ便」がどんなものか知りませんでしたが、先報「郵政民営化とローソン」にも引用しましたが、朝日新聞のヤマト運輸会長の小倉昌男氏へのインタビュー記事1989年11月25日夕刊経済特集)に私はビックリしました。

そして、ヤマト運輸の顧客思いの商品開発に感心しました。

 

……うちはあくまで利用者の立場でサービスを考えていこうと」

 「ゴルフやスキーの宅急便も普通のとは違うサービスを要求されます。つまり、普通の宅急便は翌日届けてほしいが、ゴルフやスキーの場合、荷物は何日も前に出すけど、配達は自分が現地に着く直前にしてほしい。何日も前に着いたら、ゴルフ場やホテルだって困ります。ですから、それまで現地の営業所で預かっておく。同じ運ぶのでも、荷物によって運び方を変えなきゃいけない。そこまでやらないと、サービス業ではないわけです」……


 更に、小倉氏へのインタビューが続きます。

 

−−年賀はがきの季節です。小倉さんは年賀はがきの料金を半分にしろとのご意見ですが

 「年賀はがきと普通のとではコストが全然違います。スタンプを押さなくていいし、差し出しの時だってまとめて郵便局まで持って行く。それをゆっくり仕分けし、ひもに縛って配達する。どう考えても、半分は利益です。300億から500億円の利益があるはずです

 −−それはそれとして「ゆうパック」は頑張ってますよね。

 「しかし、郵便局で『ふるさと小包』といってサクランボなどを売るなんて、官業としてやりすぎだし、年賀はがきの利益を小包のダンピングに回している。民業圧迫です。郵便局は民営化すべきです。同じ郵便なのに、民間との競争がある小包は値引きし、独占のはがきは下げない。まさに独占の弊害です」……

 

 小倉氏の推測通りに年賀ハガキの半分が利益なら、先の私の計算では、1000億円にもなります。

 

 何故、年賀郵便(「信書」にしても)を民間が取り扱えないのでしょうか?

例年、郵便局は、年末年始に多量のアルバイト労力を導入して年賀郵便を処理しているのではありませんか!?

 朝日新聞(2003年12月30日)には、次の記事が載っています。

 

 今年も残すところあと2日。郵便局では年賀状の仕分け作業が追い込みに入っている。

 福井市板垣4丁目の福井南郵便局では20日から約110人のアルバイトを動員し、職員とともに6交代、24時間態勢で仕分け作業を始めた。24日からは日中は女子高校生のアルバイト約120人が加わった

 同郵便局では28日までに約198万枚の年賀状を受け付けた。昨年同期よりも約61万枚少ないが、最終的には約370万枚と若干増を予想している。

 担当者は「年々投函(とうかん)の時期が遅くなっているようだ。とにかく1日でも早く出してほしい」と呼びかけている。

 元日は、同郵便局の職員と男子アルバイト約110人を動員して約260万通を配達する見込みという。

 

 そして、アルバイトの不祥事が、新聞紙面に載ることも多々あります。

例えば、朝日新聞(2002年1月8日)には、次の記事が載っています。

 

兵庫県猪名川町松尾台2丁目のマンション敷地内に139枚の年賀状が放置され、猪名川郵便局が配達先を訪れて謝罪していたことが、8日分かった。年賀状は5日にマンションの14世帯に届けられる予定だった。

 同郵便局によると、7日午前、マンションの清掃員がごみ集積場横の溝で年賀状を見つけた。ぬれてしまって字がにじみ、しわになった年賀状もあったという。局員が夕方に謝罪して回った。アルバイトが配達を担当していたという。

 村上宗司局長は「配達途中に止めた自転車から盗まれたか、落とした可能性もある。配達できなかったことは申し訳ない。原因が分かれば、配達先に再度ご説明したい」と話している。

 

この様に公社ならではという理由付けもない年賀郵便という宝箱を独り占めにしながら、郵便局(今、郵政公社)は、累積赤字を、5500億円も積み上げてきたのです。

 

 そんな郵政公社が、民間で十二分に寄与している「宅配業務」に、安値攻勢で殴り込んできてどうなるのでしょうか?

国に護られている今のうちに、安値攻勢で民間企業を押し潰した後はどうなるのですか??!!

 

 サンデー毎日(2004.10.17)に『クロネコヤマト「宣戦布告」の行方』との要点を突き、且つ、要点を外した署名(本誌・本多 健)入りの記事を見ました。

 

「サプライズがないのがサプライズ」などと椰捻された内閣改造翌日の928日夕、「郵政民営化実現内閣」と豪語する小泉純一郎首相のコメントが新聞各紙面に躍る中、宅配便業界トップ「ヤマト運輸」から一枚のリリースが記者クラブに配られた。

 その内容は、「不公正取引」を理由に、コンビニ「ローソン」での郵便小包「ゆうパック」の取り次ぎの差し止めなどを求め、郵政公社を東京地裁に提訴したという物騒なモノだ。

 ヤマトはここ最近、公社は手紙やはがきの信書の独占分野で得た利益を競争分野の宅配の値引きに投入している」 「税金もロクに払わず、駐車禁止区域にも堂々と車を止められる相手と今後も対等に戦えと言うのか」

 などと、民営化を機に焼け太ろうとする″官″への批判を強めていた。

 昨年も公社が郵便局内に誘致したローソンの開店がヤマトの横やりで遅れるなど、コンビニ業界2位のローソン店舗網をめぐる綱引きは激化するばかり。ヤマトは「時間帯指定」「ゴルフ便」など同社の「宅急便」のサービスに、その都度、追随してくる公社の〃サルまねぶり〃を示した資料まで用意した。山崎篤社長は、「これじゃ酒税がかかる民間のビールと公社の無税ビールとで競争させられるようなものだ!」

 と憤まんをあらわにした。……

 

 とここまでは、「ヤマトの宅急便が、ゆうパックより割高」になってしまう事情を、実に要領よく纏められた本多氏ご自身が、(何を血迷ったのでしょうか?)「ヤマトの宅急便が、ゆうパックより割高」なのが理解を得にくい……と、次のように記述しているのです。

 

 しかし、この提訴が今ひとつ利用者から理解を得にくいのは、ヤマトの宅急便が、ゆうパックより割高なことだ時間帯指定の区割りの細かさなど、サービスの質では他社の迫隠を許さないと評される宅急便だが、ゆうパックのリニューアルで価格の差はさらに広がった。並列サービスが可能となるよう交渉を重ねていた」と説明し、利用者にとっては選択肢を減らされた形だ。

 

 何故、本多健氏は、この様な寝惚けたことを書いたのでしょうか?

次のような注目すべき記述をしていながら。

 

 「80年代のアメリカでは、競争分野の赤字を独占分野の黒字で補てんする公営企業の体質に対し、新興企業が次々と問題提起したことが、通信分野の独占企業の解体を進めました。……

 

本多氏は、更に妄言を繰り返します。。

 

(宅配の)シェアが6%しかない公社を、何で3分の1を占める業界トップが独禁法違反で訴えるのか?」。素朴な疑問が利用者からわくのは当然だ

 

ヤマト運輸は、郵便局が独占的に行っていた「郵便小包」の業務を改善して、いわばシェア0%だった分野から、今の地位を築いたのですよ。

初めのシェアが小さかろうと今後の影響力を予測するのは困難です。

公社は、安値攻勢を掛けて民間を駆逐し、「宅配業務を独占」した後は、また、一般郵便業務通りに、世界的に見て割高な料金を私達に押し付けるかもしれません。

 

 そして、ヤマト運輸の懸念通りに事態は進行します。

朝日新聞(10月16日)の記事は次のようです。

 

 日本郵政公社は15日、東京・本郷郵便局の空きスペースをコンビニエンスストアのエーエム・ピーエム(am/pm)・ジャパンに貸すと発表した。コンビニ業界で郵便局内に開店するのは、ローソンに続く2社目。いずれも郵便小包「ゆうパック」を取り扱う陣営だ

 am/pmの郵便局内1号店は店舗面積190平方メートルで、通常店の1・3倍。地域住民が自由に使える伝言板を設置するなど公共的なサービスを取り込みつつ、通常のコンビニと同様の品ぞろえとする。来店客は1日1千人を見込んでおり、公社は郵便局の集客効果が高まると見ている。

 

 更に驚くことに、本多氏は、次の生田総裁発言を無批判に掲載しています。

 

生田正治総裁も、「適正な利潤はきっちりと計算しているし、不当廉売なんて大変当惑した」と、涼しい表情だ。

 

 生田氏が、「宅急便より安価なゆうパック」に於いて「適正な利潤はきっちりと計算している」と言うなら、「年賀ハガキというドル箱をかかえた郵便料金が、何故、メール便より割高なのでしょうか?

 

 万が一にも、生田氏見解通りに、「宅急便より安価なゆうパックが適正な利潤はきっちりと計算している」と言うのなら、郵便業務に於いて、全国に均一のサービスを謳っている郵政公社は、「ゆうパックに於いても全国均一料金」を謳った上での料金設定をすべきではありませんか?

 

 更には、「ゆうパックが、適正な利潤はきっちりと計算した上で、宅急便より安価な価格設定」であるというのなら、“『信書』配達の国家独占を定めた郵便法五条を、そこだけ削除してくれれば民間と対等の競争になる。”とのヤマト運輸会長小倉氏の主張を受けて、「信書配達」に於いても、民間と対等な競争を行うべきではありませんか?

 

 又、gendai.net(8月7日 掲載)には次の記述がありました。

http://www.gendai.net/contents.asp?c=036&id=15525)

 

 郵政民営化論議が本格化してきたが、小泉首相が何をしたいのか、どんな郵便局の姿を描いているのか、いまだにサッパリ分からない。……

 小泉さんは、「民間でやれることは民間に。民間でやれないことを政府がやる」と言っている。この原理原則に従うと、持ち株会社の下に置かれた3事業が一体のままで全国一律のサービスを提供するなんて、民間にはできないことなのだ。となると、郵政事業は政府がやるしかないということになる。
 
採算を考えれば閉鎖確実の山間、へき地、離島の郵便局に限って政府が運営し、既存の民間企業と競合するような都市部の郵便局は閉鎖する郵政改革の目指すべき道は、これしかないはずである

 

 「全国一律のサービスを提供するなんて、民間にはできない」と記述するgendai.netは、民間(ヤマト運輸)の力を見くびっておられるのかもしれません。

 先にも引用しました朝日新聞のヤマト運輸会長の小倉昌男氏へのインタビュー記事1989年11月25日夕刊経済特集)には次のヤマト運輸会長小倉氏発言も掲載されています。

 

 −−民営化したら過疎地へはなかなか郵便が届かないとか、サービスが悪くなりませんか。

 「郵政省はそれを言いますけど、すでに国のカネで全国に何万という郵便局がつくってあります。過疎地といっても道路は舗装してあるし、渋滞もないから、交通事情はむしろいい。民営化でサービスが悪くなるなんて、ありえないですよ。しかも、郵政省は民営化に反対する一方で、NTTに対しては、もっと民に徹しろと厳しいんですからね」

 

 次の件も、先報「郵政民営化とローソン」にも引用しましたが、朝日新聞(8月28日)には次のような郵政公社・生田総裁の談話が載っています。

 

 日本郵政公社の生田正治総裁は27日、日本記者クラブで講演し、「民業圧迫」批判に反論した。……

 郵便小包の取り扱いを決めたローソンの店頭から、ヤマト運輸が撤退を表明した問題では「シェア6%の公社が並列して置かせてほしいというのは民業圧迫にあたらない。……

 

 この様な生田氏の“シェア6%の公社”だから何をやっても“民業圧迫にあたらない”と言うなら、「シェア0%のヤマト運輸に『信書』の配達を認めたところで、公社圧迫に当たらない」と言うことになるのではありませんか?

 

 次の件も、先報「郵政民営化とローソン」にも記載しましたが、テレビ東京の番組WBS中で、ローソン社長の新浪剛史氏は、小谷真生子氏の“ヤマトの宅急便からゆうパックに切り替えた件、もう少しヤマトの話し合いを続けた方が良かったのでは?”との質問に対して、次のように答えていました。

 

……ヤマトさんとの契約が独占契約となっていたので、私共はお客さんに色んな商品をご提供する、ですから、ゆうパックが良いというお客様も居られれば、黒猫ヤマトがよいとおっしゃるお客様も居られまして、それぞれ良さがありまして、そういう選択の幅をお客様に提供するのが我々の役割と言うことを、御理解頂くべくヤマトさんと半年間交渉を重ねてきました。

……

ですから、そういうお客様の声を聞いて、やって行くのが我々の役目だ。……

 

 この様な発言をするローソン社長の新浪氏に対して次の見解を私は浴びせたいのです。

 

 “『信書』の配達も、郵便公社が独占するのではなく民間にも任せるべきです。

“民間では『信書』の秘密性が確保されるかが心配なので、そんな時は郵便公社がよい”という利用者もいましょうし、“『信書』と言ってもたいした秘密もないし、漏れては困る秘密文はメールで送るし、公社だから秘密が絶対保たれる保証もないし民間で充分”という利用者もいましょう。

ですから、『信書』の配達を郵便公社に委ねるか、民間に委ねるかは、国が決めるのではなくて、利用者、即ち、国民が決めるべきです

 

 私は、友人にCDを送付する際、何度か「セブンイレブン」のレジに持って行き、「クロネコメール便」での発送を依頼しました。

その時、次の点を痛感しました。

 

クロネコメール便の方が確かに安い!
レジ係りの店員さんの手間が大変だ!〜なにしろ、メール便の内容物が『信書』でないことを確認しなくてはならないのですから!


 従って、「クロネコメール便」が、『信書』も取り扱えたなら、店員さんの手間はいらなくなるでしょう。

なにしろ、私達は、郵便物同様にクロネコメール便に郵便物の切手に相当する「バーコードシール?」を貼って、ローソンのレジ前に置かれた、郵便ポスト同様なメールポストに投函するだけで済んでしまうのですから。

その結果、クロネコメール便はもっと安価になるのではないでしょうか?

 

 ですから、

「『信書』配達の国家独占を定めた郵便法五条」は、民間の『信書』配達を阻止するだけでなく、民間の『信書』以外のクロネコメール便などの、手間の削減、コスト・ダウン効果による、シェアの拡大を、活動を妨害しているのです。

 

そして、小泉首相は「小泉内閣メールマガジン 136号(2004/04/08)」に於いて、次のように語っています。

 

 郵便にしても、貯金にしても、保険にしても、いま、全部民間でもやっていますね。「民間にできることは民間に」という方向に向かっています。

 

 民間企業は税金を払っていますが、郵便局は、法人税などの税金を払っていないんです。預金の場合は、民間金融機関は預金保険料を納めなければなりませんが、郵便局は免除されています

……

 郵便局を民間に任せれば、もっと多様なサービス展開をしてくれると思います。かつて、宅配便は民間でできるわけがないと言われていました。いまはもう民間がどんどん進出して、郵便局よりもいいサービス、安い料金でやっているでしょう。民間にできないことはありません。

 

 民間は税金を払って事業をしています。郵政事業を民営化すれば、利益を上げないと倒産してしまいますから、一所懸命になるはずです。そして、利益が上がれば税金を払う側になるわけです。貴重な税金は効率的に使わなければいけません。

 

 この様に小泉首相は「民間にできることは民間に」との信念を持っているのですから、早急に、「郵便法五条」を廃棄して、『信書』の配達も民間にも許可すべきなのです。

そして、「民営化された郵便局」に「利益が上がれば税金を払う側になるわけです」から、その税金の恩恵を国民が等しく授かることが出来ます。

しかし、

 税金を払わない「郵便局」が、税金を払わない分、「ゆうパック料金を安価にする」のであれば、その払われるべき税の恩恵は、ゆうパック利用者だけに行き、国民全員には行き渡らないのです。

 

 これでは恰も、税金を投入して公共料金を安価にするようなものです。

即ち、公共料金を払えば払う人程その投入された税金の恩恵を受けますが、公共料金を殆ど払わない人達は、その投入された税金の恩恵を受けることはありません。

 

 そして、何よりも残念なことは、小泉首相が「宅配便は民間でできるわけがないと言われていました。いまはもう民間がどんどん進出して、郵便局よりもいいサービス、安い料金でやっているでしょう」と語っているように、先の拙文「郵政民営化とローソン」にも書きましたが、頑張って道を切り開いた人達(ヤマト運輸の方々)が報われない社会では、これからの日本は尚のことお先真っ暗となってしまうと思うのです。

 

 ヤマト運輸を保護せよと言うのではありません、郵政公社が「ゆうパック」などで「宅急便」などと競うなら、ヤマト運輸の主張通りに、フェアーに競うべきです。

 

 ヤマト運輸の小倉会長の言い分のように、「郵便法五条」を廃棄して、『信書』の配達も、そして、郵政公社の「打ち出の小槌」でもある「年賀郵便」も民間にも許可すべきなのです。

 

 そして、価格設定も、濡れ手で粟の「印紙収入」を除外して行うべきです。

そして、上がってくる利益に対して、国に払うべき税金は、先の拙文「郵政民営化とローソン」にも引用しましたが、郵政公社・生田総裁は、次の発言を実行に移すべきです。

朝日新聞8月28日付け

 

 日本郵政公社の生田正治総裁は27日、日本記者クラブで講演し、「民業圧迫」批判に反論した。……税の優遇措置があるのは、過小資本を自分で利益を上げて積み増す枠組みだからだ」と主張した。

 

 この件を、更に、雑誌「アエラ」(2004年09月13日号)の記事で補足します。

 

郵政公社の自己資本比率は1%程度で、リスクに備えるため積み増しが必要だが、財源難で政府は財政措置を取らず、公社が稼いだ利益から充当することになった。税金で払う代わりに資本金として積むもので、政府の支出を肩代わりしているのだから税金と同じだ――という主張だ。

 

 即ち、民間であったら当然払わなければならない税金分(即ち、「税の優遇措置」で支払わない分)を、「過小資本を自分で利益を上げて積み増す」との言通りに、「郵政公社の民営化前に自己資本」として、キチンと積み上げて欲しいのです。

 

 ここで私が考える公社と民間のフェアーな競争の前提条件を、もう一度、改めて表で示しますと、次のようになります。

公社と民間のフェアーな競争の前提条件
濡れ手で粟の「印紙収入」は全て「5,518 億円の債務超過」の償却に充当する。
「郵便法五条」を廃棄して、『信書』の配達も、郵政公社の「打ち出の小槌」でもある「年賀郵便」も民間にも許可する。
税の優遇措置」で支払わない税金分を、「郵政公社の民営化前に自己資本」として、キチンと積み上げる。


 少なくもこの程度のことをしてくれれば、私は、郵政公社が民業を圧迫しているとは、言わないでしょう。

 

 そして、ヤマト運輸は毎日新聞(10月14日)によりますと次の手を打っています。

 

 宅配便最大手のヤマト運輸は13日、「宅急便」の集荷や再配達にかかる時間について顧客の要望に最大限に応えるため、地区担当ドライバーが携帯電話で直接顧客とやり取りする「ドライバーダイレクト制」を11月に始めると発表した。「今すぐ自宅に来てほしい」という要望に応えられる場合もある。同社は宅急便より料金が安い日本郵政公社の郵便小包「ゆうパック」との競争で、サービス向上を切り札にしていく方針だ。……

 ドライバーは営業も兼務しており「地域の顔」となる狙いもある。

 同社はこの制度を徹底するため、地区担当ドライバーの携帯電話番号を記した名刺を全国の各世帯に配布するほか、チラシも配ってPRする。現行料金は維持する。

……

 郵政公社の動きを「民業圧迫」と批判するヤマト運輸は「価格でなくサービスで勝負する。勝つ自信はある」(広報課)と一歩も引かない構えだ。

 

 私はこの様な、ヤマト運輸の姿勢を素晴らしいと思い、応援するのです。
(この様に発展的思考を有するヤマト運輸が、牛乳配達や、新聞配達、更には地域の見回り等々も手掛け「地域の顔」としての存在感を確立していったら〜!と思わずにはいられません。)

 

 一方、現在の郵政公社職員(40万人)の、今後の働き口は、大問題です。

 

 朝日新聞(9月10日)には、次の記事が載っています。

 

●過疎地で貢献

 山あいの奈良県・上北山村。信用金庫の出張所が昨春に撤退し、唯一の金融機関となった上北山郵便局では、5人の外務員が日に2回、往復3時間の配達をしながら、お年寄りや独り暮らし世帯への「声かけ」をする。「お体の調子は?」「困りごとはないですか」

 「声かけ」は、全国の過疎地の郵便局で「ひまわりサービス」として97年度に制度化された。このほか、高齢者の生活状況調査や廃棄物の不法投棄見回り、窓口での証明書交付など、282市区町村の1707局で、郵便局が自治体の仕事を有料で請け負う

 それを主に担うのが、約2万4千の郵便局の8割近くを占める小規模な特定郵便局と、そこで働く約10万5千人。明治時代の郵便制度創設時、整備を急ぐ国が地元の有力者に頼み局舎の提供を受けたことが始まりだ。

 「原点は、地域のためのボランティア。普通郵便局や民間金融機関とは出発点が違う」と全国特定郵便局長会の高橋正安会長は強調する。……

 

 この様な、特定郵便局の働きは貴重で今後も必要なことです。
そして、この件に関しては、先の、
gendai.netの記述が、頭に浮かびます。 

 採算を考えれば閉鎖確実の山間、へき地、離島の郵便局に限って政府が運営し、既存の民間企業と競合するような都市部の郵便局は閉鎖する郵政改革の目指すべき道は、これしかないはずである

 しかし、だからといって、全ての特定郵便局が国の管轄下にある必要はないはずです。

民営化して、民間の(例えば、民営化された後の元郵便局やヤマト運輸など)配達業者の過疎地配達を請け負っても良いのではありませんか?!

 

 そして、民営化後、郵政公社職員(40万人)の仕事内容が、この山間地の特定郵便局の方々のように、従来の郵政業務内容に同じである必要はないのではありませんか?!

 

 例えば、殆どを輸入に頼る農産物を国産化する為の新しい農業の開発、とか、無駄に、場合によっては不法に、捨てられたり、燃されたりしている廃棄物の再利用等々での業務を、新しい可能性を求めて切り拓いて行くべきではないでしょうか?!
 
 そして、先の拙文郵政民営化とローソン」にも書きましたが、今の日本に必要なのは、新しい業務形態の開拓ではありませんか?!

朝日新聞(9月29日)の次の記事には、世論調査によると“年金・福祉問題」と「景気・雇用」で全体の8割を占め……”と書かれています。

 

 第2次小泉改造内閣の発足に伴い、朝日新聞社が27日夜から28日夜にかけて実施した全国緊急世論調査によると、首相が最重点の政策課題に掲げる郵政民営化に「賛成」と答えた人は45%で、「反対」の33%を上回った。しかし、「新しい内閣で一番力を入れてほしいこと」は「年金・福祉問題」と「景気・雇用」で全体の8割を占め「郵政改革」を挙げた人は2%に過ぎず、首相と有権者の意識のギャップも浮き彫りになった。……

 

 しかし、“「郵政改革」を挙げた人は2%に過ぎず”という「郵政改革」を実行する過程での新たな業務形態の創出こそが「景気・雇用」の改善につながるのだと思います

 

 一方、出店競争を続けるコンビニ業界に於いて、郵便局内の出店は、ローソンのみならず魅力的な存在なのでしょう。

昨夜(10月15日)のテレビ東京の番組「WBS」に於いて、小谷真生子氏の郵政公社との今後の関係への質問に対しての、セブンイレブンの代表取締役会長である鈴木敏文氏の回答は次のようでした。

“郵政公社の人とは時々会ったりしている……”


 従って、郵便局内のセブンイレブンの出店の魅力もあって、早々にセブンイレブンでも「ゆうパック」等の取り扱いを始めるのかもしれません。

 

 郵便事業の民営化、即、コンビニ展開、それに付随しての「ゆうパック戦略」だけではお粗末ではないでしょうか?!


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